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【サンツアーの全て】

その12 「先回り編 サイクロンM2」

シュパーブシリーズの第2世代登場によりサンツアーは商品構成の再編成を行いました。最高級品から高級品、中級品、普及品、ジュニアスポーツ車向け、一般車向けのラインナップを一新したのです。今から思えばこれからの10年間が絶頂期だったのかも。

変速機関係では最高級品はレース用のシュパーブシリーズ、これは別格扱いでツーリング用変速機は無し、高級品がサイクロンマーク2とシュパーブテック、中級品はARXとVx(Vシリーズの最終形態、その後のVxは別物)、普及品がAR、ジュニア向けがクリマチック等、一般車向けにはラブ他幾つかのモデルが用意されました。(ARX・ARはサイクロンM2と同一設計で材質が異なる物です、詳細は次回以降で)

またこの頃アメリカ市場ではBMXから派生したオールテライン(どこでも走れるぞという意味ですな)バイクがマウンテンバイクと言う商標の登録問題でゴタゴタしたのにも関わらず雨後の筍の様に(米国産の竹の子は食べた事無いなあ)メーカーが登場し、27インチ10スピード車に取って変わって市場を席巻しつつあったのでMTB専用変速機も登場しました、ルテック、マウンテックです。この2機種はARXのボディにウルトラワイドキャパシティを実現するチェーンケージを装着し幾らか頑丈に造られていました。

さてサイクロンM2の話ですが、とある日馴染みの自転車屋さんに行くと「v−luxe君、名前変えない?サイクロンM2ってさあ」と言ってショーケースから取り出したのがサイスポに写真の載っていたサンツアーの最新変速機サイクロンマークツーでした、GTケージを採用したツーリングモデルにも関わらず手に取ると思わず後ろにひっくり返るほどの軽さ。これは・・・「下さい」と言うなりシュパーブテックGTを放り出して電撃換装、「しまったアウターチューブが無い」(シュパーブテックはアウター不要の変速機なのです)「アウターも下さい」インナーワイヤーが短いので「インナーも下さい」と大騒ぎ。ワイヤーの引き回しはサイクロンの血筋は争えずパンタ部の中を貫通する形式を固執していましたが初代に比べて格段に通し易く成っていました。

走って調子を見ると「うおをオヲー、引きが軽いぞ、変速が早いぞ、見た目に綺麗だぞ」と有頂天、その後10年に渡って私のランドナーの変速機の座を守り抜いたのですが、おかげでその後店主から「あれをお前さんに売ったのは俺の一生の不覚だったあれ以後ちっとも変速機を買ってくれなくなったじゃないか」と泣かれてしまいました、と余計な話でした。

私が入手したサイクロンM2はどうやら量産試作品あるいは先行量産品(いわゆる評価用・バイヤー向けに「こんなん出来たでぇ」と渡す物)だったようで、幾つかの部品が鉄製でした(大きな点では本体取り付けボルトの形式・材質がその後に市販された物と違っていました)。ですから私のサイクロンM2の評価は他の方々とは違うかも知れません、

私の評価はリターンスプリングが弱いので変速レバーのフリクション(摩擦)をぎりぎりまで減らせる事に因り「レバーに触れるだけで変速出来る」に尽きます。変速速度が早いのはサンツアー製品ですから当然ですし、V−GT以来のクイックケージによりチェンの脱着が容易で、ローギヤ34歯対応(GTエンド使用時)と文句無しでした。皆さんがお使いになったサイクロンM2の評価はいかがですか。

サイクロンM2は空気の流れにも気を配った変速機でして、初代に比べて滑らかな表面と風当たりの強い面を膨らませて抵抗を低く設計して有りました。もっとも空気抵抗の低減よりも汚れの着きかたが少なく簡単に拭えてロゴ回りの汚れが残らない事の方がありがたかったです。もっともそんなことよりも製造現場での生産性向上の為に滑らかなボディにしたのかも知れませんが。(金型の管理が楽だとか磨き易いとかです、初代サイクロンの様にロゴマークが浮き彫りに成っていると金型が痛んで補修するのに余計な金が掛かります、まあ大した金額では無いらしいですが、この辺専門外ですので当てになりませんです)サイクロンM2のロゴマークは印刷でした。金型を交換すること無くロゴを変更出来るので部品のストックも楽なのかも知れませんね。(本体の使い回しがきく)Vシリーズではレース用とツーリング用V−GTとでパンタ部のロゴマークが異なっていましたから。


いつも拙い文章をお読み頂きまして誠に有り難うございます。サンツアーブランドに成る前の前田工業の資料若干を寄与頂きました、ありがとうございます。前田氏がフリーホイールの製造を始めたのは大正中期だそうです、勿論シングルフリーです。べつに日本初という訳ではないそうです。詳細は加筆訂正判に反映させて頂きます。

お願い 以前にも情報提供をお願い致しましたが、昭和31−32年頃の前田製カセットフリーに関する情報を探しております、存在した事だけは確認出来ましたが構造やハブの事などが不明です。皆様のお父上やお祖父様で御存知の方いらっしゃいませんでしょうか、是非ともご協力をお願い申し上げます。

その13に続く


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