(目的)
第1条 この法律は,自転車に係る道路交通環境の整備及び交通安全活動の推進,自転車の安全性の確保,自転車等の駐車対策の総合的推進などに関し必要な措置を定め,もつて自転車の交通に係る事故の防止と交通の円滑化並びに駅前広場等の良好な環境の確保及びその機能の低下の防止を図り,あわせて自転車等の利用者の利便の促進に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において,次の各号に揚げる用語の定義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 自転車 道路交通法(昭和35年法律第一〇五号)第2条第一項第11号の2に規定する自転車をいう。
二 自転車等 自転車又は原動機付自転車(道路交通法第2条第1項第10号に規定する原動機付自転車をいう。)をいう。
三 自転車等の駐車場 一定の区画を限って設置される自転車等の駐車のための施設をいう。
四 道路 道路法(昭和27年法律第180号)第2条第1項に規定する道路および一般交通の用に供するその他の場所をいう,
五 道路管理者 道路法第18条第1項に規定する道路管理者をいう。
(国及び地方公共団体の責務)
第3条 国及び地方公共団体は,第一条の目的を達成するため,自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する全般的な施策が有効かつ適切に実施されるよう必要な配慮をしなければならない。
(良好な自転車交通網の形成)
第4条 道路管理者は,自転車の利用状況を勘案し,良好な自転車交通網を形成するための必要な自転車道,自転車歩行者道等の整備に関する事業を推進するものとする。
2 都道府県公安委員会は,自転車の利用状況を勘案し,良好な自転車交通網を形成するため,自転車の通行することのできる路側帯,自転車専用車両通行帯及び自転車横断帯の設置等の交通規制を適切に実施するものとする。
3 道路管理者,都道府県警察等は,自転車交通網の形成と併せて適正な道路利用の促進を図るため,相互に協力して,自転車の通行する道路における放置物件の排除等に努めるものとする。
(自転車等の駐車対策の総合的推進)
第5条 地方公共団体又は道路管理者は、通勤、通学、買物等のための自転車等の利用の増大に伴い、自転車等の駐車需要の著しい地域又は自転車等の駐車需要の警しくなることが予想される地域においては、一般公共の用に供される自転車等駐車場の設置に努めるものとする。
2 鉄道事業者は、鉄道の駅の周辺における前項の自転車等駐車場の設置が円滑に行われるように、地方公共団体又は道路管理者との協力体制の整備に努めるとともに、地方公共団体又は道路管理者から同項の自転車等駐車場の設置に協力を求められたときは、その事業との調整に努め、鉄道用地の譲渡、貸付けその他の措置を講ずることにより、当該自転車等駐車場の設置に積極的に協力しなければならない。ただし、鉄道事業者が自ら旅客の利便に供するため、自転車等駐車場を設置する場合は、この限りでない。
3 官公署、学校、図書館、公会堂等公益釣施設の設置者及び百貨店、スーバーマーケット、銀行、遊技場等自転車等の大量の駐車需要を生じさせる施設の設置者は、周辺の土地利用状況を勘案し、その施設の利用者のために必要な自転車等駐車場を、当該施設若しくはその敷地内又はその周辺に設置するように努めなけれぱならない
4 地方公共団体は、商業地域、近隣商業地域その他自転車等の駐車需要の著しい地域内で条例で定める区域内において百貴店、スーバーマーケット、銀行、遊技場等自転車等の大量の駐車需要を生じさせる施設で条例で定めるものを新築し、又は増築しようとする者に対し、条例で、当該施設若しくはその敷地内又はその周辺に自転車等駐車場を設置しなければならない旨を定めることができる。
5 都道府県公安委員会は、自転車等駐車場の整備と相まって、歩行者及び自転車利用者の通行の安全を確保するための計画的な交通規制の実施を図るものとする。
6 地方公共団体、道路管理者、都道府県警察、鉄道事業者等は、駅前広場等の良好な環境を確保し、その機能の低下を防止するため、必要があると認めるときは、法令の規定に基づき、相互に協力して、道路に駐車中の自転車等の整理、放置自転車等(自転車等駐車場以外の場所に置かれている自転車等であつて、当該自転車等の利用者が当該自転車等を離れて直ちに移動することができない状態にあるものをいう。以下同じ。)の撤去等に努めるものとする。
第六条 市町村長は、駅前広場等の良好な環境を確保し、その機能の低下を防止するため必要があると認める場合において条例で定めるところにより放置自転車等を撤去したときは、条例で定めるところにより、その撤去した自転車等を保管しなければならない。
2 市町村長は、前項の規定により自転車等を保管したときは、条例で定めるところによりその旨を公示しなければならない。この場合において、市町村長は、当該自転車等を利用者に返還するため必要な措置を講ずるように努めるものとする。
3 市町村長は、第一項の規定により保管した自転車等につき、前項前段の規定による公示の日から相当の期間を経過してもなお当該自転車等を返還することができない場合においてその保管に不相当な費用を要するときは、条例で定めるところにより、当該自転車等を売却し、その売却した代金を保管することができる。この場合において、当該自転車等につき、買受人がないとき又は売却することができないと認められるときは、市町村長は、当該自転車等につき廃棄等の処分をすることができる。
4 第二項前段の規定による公示の日から起算して六月を経過してもなお第一項の規定により保管した自転車等(前項の規定により売却した代金を含む。以下この項において同じ。)を返還することができないときは、当骸自転車等の所有権は、市町村に帰属する。
5 第一項の条例で定めるところによる放置自転車等の撤去及び同項から第三項までの規定による自転車等の保管、公示、自転車等の売却その他の措置に要した費用は、当該自転車等の利用者の負担とすることができる。この場合において、負担すべき金額は、当該費用につき実費を勘案して条例でその額を定めたときは、その定めた額とする
6 都道府県警察は、市町村から、第一項の条例で定めるところにより撤去した自転車等に関する資料の提供を求められたときは、速やかに協力するものとする。
(総合計画)
第七条 市町村は、第五条第一項に規定する地域において自転車等の駐車対策を総合的かつ計画的に推進するため、自転車等駐車対策協議会の意見を聴いて、自転車等の駐車対策に関する総合計画(以下「総合計画」という。)を定めることができる。
2 総合計画は,次に掲げる事項について定めるものとする
一 総合計画の対象とする区域
二 総合計画の目標及び期間
三 自転車等駐車場の整備の目標量及び主要な自転車等駐車場の配置、規模、設置主体等その整備に関する事業の概要
四 第五条第二項の規定により自転車等駐車場の設置に協力すべき鉄道事業者(以下「設置協力鉄道事業者」という。)の講ずる措置
五 放置自転車等の整理、撤去等及び撤去した自転車等の保管、処分等の実施方針
六 自転車等の正しい駐車方法の啓発に関する事項
七 自転車等駐車場の利用の調整に関する措置その他自転車等の駐車対策について必要な事項
3 総合計画は、都市計画その他法律の規定による地域の交通に関する計画との調和が保たれたものでなけれぱならない。
4 市町村は、総合計画を定めるに当たつては、第二項第三号に掲げる事項のうち主要な自転車等駐車場の整備に関する事業の概要については当該自転車等駐車場の設置主体となる者(第五条第四項の規定に基づく条例で定めるところにより自転車等駐車場の設置主体となる者を除く。)と、第二項第四号に掲げる事項については当該事項に係る設置協力鉄道事業者となる者と協議しなければならない。
5 市町村は、総合計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 前各項の規定ば、総合計画の変更について準用する。
7 総合計画において第二項第三号の主要な自転車等駐車場の設置主体となつた者及び同項第四号の設置協力鉄道事業者となつた者は、総合計画に従って必要な措置を誇じなければならない。
(自転車等駐車対策協議会)
第八条 市町村は、自転車等の駐車対策に関する重要事項を調査審議させるため、条例で定めるところにより、自転車等駐車対策協議会(以下「協議会」という。)を置くことができる。
2 協議会は、自転車等の駐車対策に関する重要事項について、市町村長に意見を述べることができる。
3 協議会は、道路管理者、都道府県警察及び鉄道事業者等自転車等の駐車対策に利害関係を有する者のうちから、市町村長が指定する者で組織する。
4 前項に規定するもののほか、協議会の組織及び運営に関して必要な事項は、市町村の条例で定める。
(自転車等駐車場の構造及び設備の基準)
第九条 一般公共の用に供される自転車等駐車場の構造及び設備は、利用者の安全が確保され、かつ、周辺の土地利用状況及び自転車等の駐車需要に適切に対応したものでなければならない。
2 国は、前項の自転車等駐車場の安全性を確保するため、その構造及び設備に関して必要な技術的指針を定めることができる。
(都市計画等における配慮)
第十条 道路、都市高速鉄道、駐事場その他駅前広場の整備に関連する都市施設に関する都市計画その他の都市環境の整備に関する計画は、当該地域における自転車等の利用状況を適切に配慮して定めなければならない
(交通安全活動の推進)
第十一条 国及び地方公共団体は、関係機関及び関係団体の協力の下に、自転車の安全な利用の方法に関する交通安全教育の充実を図るとともに、自転車の利用者に対する交通安全思想の普及に努めるものとする。
(自転車等の利用者の責務)
第十二条 自転車を利用する者は、道路交通法その他の法令を遵守する等により歩行者に危害を及ぽさないようにする等自転草の安全な利用に努めなければならない。
2 自転車等を利用する者は、自転車等駐車場以外の場所に自転車等を放置することのないように努めなければならない。
3 自転車を利用する者は、その利用する自転車について、国家公安委員会規則で定めるところにより都道府県公安委員会が指定する者の行う防犯登録(以下「防犯登録」という。)を受けなければならない。
(自転車の安全性の確保)
第十三条 国は、自転車について、その利用者等の生命又は身体に対する危害の発生を防止するため必要な品質の基準を整備すること等により、その安全性を確保するための措置を講ずるものとする。
(自転車製造業者等の責務)
第十四条 自転車の製造(組立を含む。以下同じ。)を業とする者は、その製造する自転車について、前条に定める基準の遵守その他の措置を講ずるとともに、欠陥による損害のてん補の円滑な実施に必要な措置を講ずる等安全性及び利便性の向上に努めなければならない。
2 自転車の小売を業とする者は、自転車の販売に当たっては、当該自転車の取扱方法、定期的な点検の必要性等の自転車の安全利用のための十分な情報を提供するとともに、防犯登録の勧奨並びに自転車の点検及び修理業務の充実に努めなければならない。
3 国は、自転車の製造を業とする者及び自転車の小売を業とする者に対し、前二項の規定の施行に必要な指導及び助言その他の措置を講じなければならない。
(国の助成措置等)
第十五条 国は、予算の範囲内において、地方公共団体が都市計画事業として行う自転車等駐車場の設置に要する費用のうち、施設の整備に要する費用及び用地の取得に要する費用の一部を補助することができる。
2 国は、地方公共団体が一般公共の用に供される自転車等駐車場の設置に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
3 国は、前二項に定めるもののほか、地方公共団体が実施する自転車に係る道路交通環境の整備、交通安全活動の推進その他の自転車の安全利用に関する施策及び自転車等駐車場の整備に関する施策が円滑に実施されるよう助成その他必要な配慮をするものとする。
4 国及び地方公共団体は、民営自転車等駐車場事業の育成を図るため、当該事業を行う者で必要と認めるものに対し、資金のあっせんその他必要な措置を講ずるものとする。
5 国は、地方公共団体が設置する一般公共の用に供される自転車等駐車場の用に供するため必要があると認めるときは、当該地方公共団体に対L、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)及び道路法で定めるところにより、普通財産を無償で貸し付け、又は譲与することができる
附則 この法律は、公布の日から起算して六月を越えない範囲内において政令で定める日から施行する。